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旭川荘の小幡篤志氏:中国がより多くの介護人材を養成できるよう助力したい 

2019年 9月 18日17:20 提供:東方網 編集者:範易成

 社会福祉法人旭川荘は、日本の有名な大型総合社会福祉機構で、高齢者や知的·身体障碍者などの様々な人に対して、医療、介護、リハビリなどのサービスを提供している。また設立以来、日本国内での業務のほか、中国など東アジア地域の発展途上国にも経験を伝授し、交流を行って、アジア全体の福祉水準の向上を目指している。そしてこの中でも特に、中国との友好交流と業務提携を重視している。

 上海は中国で一番早く高齢化社会に入ることが予想されている都市だ。上海市はすでに30年前から旭川荘との付き合いを始め、双方は民政、社会福祉、医療看護などの分野で、効果的な友好交流と提携を展開してきた。例えば、上海の視察団や研修団が、日本の旭川荘を訪問したり、旭川荘が上海で講演会を行ったり、上海に交流団を派遣したりなどしてきた。また、旭川荘は上海に先進的な「介護」理念と技術を導入し、数多くの関連分野で必要な人材の育成も担ってきた。

普陀区の老人ホームで入居者と交流する小幡篤志氏

 中日高齢者事業交流の伝承と発展

 現在、社会福祉法人旭川荘の日中医療福祉研修センターの所長を務める小幡篤志氏は、第2代理事長の故江草安彦江草氏の影響で旭川荘に入社した。2011年から、小幡氏はすでに9回上海を訪問し、上海市友と協力して、関連する政策の調査を通じて上海市の需要を検討したうえ、これに応じて専門家を上海に派遣して公益講座を開催した。そしてこれまで上海からの代表団のべ約135人を日本に招待し、見学と研修を行って、自身も講師として講義を行った。さらに、自分が編集長として作成した高齢者看護専門初級教材を上海市民政部門に贈与するなど、これまで一貫して、中日両国の友好交流事業に取り組んできた。

 小幡篤志氏はもともと1997年に厚生労働省に入省して東京に勤務していた。たまたま2008年から3年間岡山県庁に出向し、この間に旭川荘の前理事長であった江草安彦先生と出会って、日本の障害者福祉·高齢者福祉をリードしてきた江草先生の姿勢に感銘を受け、2011年に厚生労働省を退職し、旭川荘に入社した経歴を持つ。

復旦大学での講演会

上海で研修企画会議に出席する小幡氏

 小幡氏によると、旭川荘は1985年から上海市の衛生局や民政局との交流を開始し、児童や高齢者、障害者の医療福祉分野での交流を展開してきた。そして交流が拡大しつつあった1998年に、旭川荘は上海市に事務所を設置。これが「日中医療福祉研修センター」である。建物は上海市盧湾区(今の黄浦区)政府が無償で提供してくれたもので、センターには旭川荘の職員が常駐し、高齢者介護教員の研修や、講演会を企画した。

 事務所は2005年に一度移転した後、2015年まで盧湾区(黄浦区)内に置かれたが、その頃人材養成事業が軌道に乗ったことから、いったん建物を政府に返した。その際、研修センターの機能は日本の旭川荘に移された。

 「現在は私が所長として、上海からの代表団の受入れや、上海市での交流の企画を担当しています。近年は上海市民政局、黄浦区、浦東新区、普陀区、復旦大学看護学院、障害者連合会などと交流があり、年に数十名の視察団を旭川荘に受け入れていますし、旭川荘からもしばしば上海市を訪問しています」と小幡氏は述べる。

 介護とは心を支えるサービスだ

 小幡氏は今でも、初めて上海を訪ねた時の気持ちを覚えている。2011年9月に、旭川荘が派遣した約60人の視察団の一員として上海を訪ねた小幡氏は、老人ホームや児童福祉施設を視察し、交流を行った。

 「訪問するまでは、日本の施設·設備の方が先進的ではないかと思い込んでいました。しかし見学した施設には、欧米から取り入れた最新の設備がありましたので、各国から様々なことを学び取ろうとする上海の皆様の姿勢に感銘を受け、さすが中国は大国だなと思いました。また、市内の高層ビル群や万博の跡地を見て、経済発展のスピードに驚きました」。

 過去を振り返ると、上海と長い間の付き合いにおいては、人材養成事業が最大の事業だったと彼は思う。「提携プロジェクトではこれまでに約360人の人材を養成し、その方々がさらに多くの人に知識を伝えました。数年前に見せてもらった上海の高齢者介護の教科書の著者には、旭川荘で研修を受けた人が何人も含まれていたので、とても感動しました」と嬉しそうに語った。

 福祉産業は労働集約型産業であり、対人サービスが中心の産業だ。人材の育成なしに産業は成り立たない。福祉サービスは「生活」を支えるサービスというより、「心」を支えるサービス、ということだ。食事やトイレなど、何でもしてあげるのではなく、その人の残存能力を最大限に引き出し、自分でできることは自分の力でこなし、尊厳をもって生活してもらうことが大切。これが日本の「介護」の理念である。

 日本では30年前に介護の国家資格制度が創設され、認知症対策や介護予防対策など、新たな課題にも対応できる人材を養成している。日本は中国より20~30年ほど高齢化が進んでいるので、日本の歩んだ道は中国にとって参考とする価値が高いと小幡氏は思っている。「高齢者介護の人材養成に関して、旭川荘は一定の役割を果たしたと思います。そして今後は、中国でも認知症や寝たきりなど要介護度の高い高齢者が増えるので、より専門的な課題に対応できる介護人材の養成をお手伝いできればと思っています」と述べた。

上海市「白玉蘭記念賞」授賞式会場

 2019年9月12日、以上の大きな功績により上海市から「白玉蘭記念賞」が授与された。取材に応じて小幡氏は、「この賞は、私個人が受賞したのではなく、旭川荘と上海市の福祉関係者のみなさんの努力のたまものです。今後もさらに友好を深め、両国の福祉の向上を目指したいです」と感謝の意を述べた。

(編集:范易成)