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ニジマスもサーモン?中国業界団体の新基準が物議を醸す

2018年 8月 21日16:10 提供:東方ネット 編集者:王笑陽

 ニジマスはサケ?8月10日、中国の水産流通·加工協会と13社の関連会社が新たな業界団体基準を公表したが、その中に「ニジマスはサーモンである」という基準を出したことに、騒然と世論が巻き起こっている。

 サーモンの定義に関して、上海海洋大学の陳舜勝教授は東方ネットの取材に応じて次のように語った。1990年代、ノルウェイ産サーモンが中国に導入された時、中国人はそれをサーモンと呼んだ。ノルウェイ産サーモンはほとんどがタイセイヨウサケであり、サケは広義にはタイセイヨウサケやマスノスケやニジマスなどの仲間を総称できるが、中国の消費者にとってサーモンというのはタイセイヨウサケを指すことが一般的となっている。このため、今度発表された新たな業界団体基準は、サーモンの定義をサケ目の魚まで拡大するという概念のすり替えである、と考えられている。

スーパーで販売されるサーモン

 実は騒動の発端は、今年の5月に中央テレビ(CCTV)の経済チャネルで放送された「養殖サーモン」を紹介するニュースだった。このニュースによって「国内市場の3分の1を占めているサーモンは、中国のチベット高原で養殖されている淡水サーモン」ということが分かった。しかし、放送後上海のニュースメディア「澎湃新聞」が現地へ取材を行って、養殖サーモンが実はニジマスであることを突き止めた。そこで一時的に「淡水サーモン」と呼ばれるニジマスをサーモンと表示できるかどうかが賛否両論となったのだ。

 反対側は、淡水魚のニジマスには寄生虫がいる可能性が高く、生のまま食べると寄生虫に感染するリスクも高いので、ニジマスをサーモンと表示しないほうがいいと主張している。それに対して賛成側は、中国の市場でマグロがメバチやキハダなどのマグロ属の海魚の総称であるように、サーモンはサケ目の魚類の通称であって、ニジマスをサーモンと表示しても間違いがないと言い張っている。

スーパーで販売されるサーモン

 この話題の背景には、中国のサーモン産業が急速に発展しているという事実がある。銭江晚報によると、現在中国のサーモン市場の拡大スピードは125%に達しており、2025年までに国内のサーモン消費量は25万トンを超える見通しだ。ニジマスの表示問題に関する論争の本質は、輸入サーモンと国産サーモンの市場争いにすぎないと言ってもいいだろう。

 魚の養殖業者や流通業者がこのように市場を争っている中で、消費者は「サーモンと思っていたが、実際にはニジマスだったのか。万が一刺身を食べて寄生虫に感染したらどうするの」など、サーモンの食の安全性へ強く不安を抱えている。さらに商品情報に名称だけでなく、生産地もはっきり明記することを要求している。

 このような経過があったので、この度「サーモン」の定義を拡大解釈してニジマスも含むことに決めた新たな業界団体基準が公表されて、すぐさま批判を浴びることになった。特にサーモンの刺身を愛食する人の多い上海では、上海市消費者権益保護委員会が21日にサーモンの定義をめぐって公開検討が開かれる。

 また特に業界新基準の起草に参加した13社はニジマスの生産や流通などに関わっているので、その権威性と動機が大きく疑われている。それに業界団体基準というのはあくまでも一部の団体や企業に認められるものだけであり、影響力がどれぐらいあるか、といった問題にも関心が寄せられている。

(編集:W)