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『枕草子』にちまき作り 書店で過ごす理想的な午後

2018年 6月 20日17:01 提供:東方ネット 編集者:王笑陽

 理想的な午後の過ごし方は、「理想的な午後人」に学ぼう。「理想的な午後人」とは、心地のいい屋内を抜け出し、仕事をしばらく放っておいて戸外活動を楽しむ人のことだ。

――台湾作家·舒国治『理想的下午(理想的な午後)』

 端午節の3連休、上海の佘山のふもとにある上海三聯書店傘下の「山脚下的書店(山のふもとの書店)」では、午後生活節というイベントが行われた。台湾の作家舒国治が描いた「理想的な午後人」が集い、ちまきを作ったり本を読んだりして「理想的な午後」を過ごした。

上海三聯書店が刊行した『枕草子』の中国語最新版

 「節は、五月にしくはなし。菖蒲蓬などのかをりあひたるもいみじうをかし」。書店で開催された読書会は、復旦大学中文学部の梁永安副教授が講師を務め、今年上海三聯書店が刊行した『枕草子』の中国語最新版をめぐって、来場者と四季折々の自然の美しさについて話し合った。清少納言の『枕草子』は、兼好法師の『徒然草』、鴨長明の『方丈記』と並び、日本三大随筆の一つとみなされている。日本の自然風景を語ったものだが、その中で表現されている自然の美しさに対する繊細な感受性は、言語の壁を超えた共通の言葉と言えるものだ。イベントで来場者は、上海語や広東語や四川語などそれぞれの出身地の方言で『枕草子』を朗読した。

復旦大学中文学部の梁永安副教授

 読書会のほかにも、ちまきや香り袋などを作るイベントも行われた。20年以上専門的にちまき作りに携わってきた顧さんが、上海松江区の伝統的なちまきの包み方を実演してみせた。来場者からちまき作りなどの伝統技術の伝承問題について尋ねられると、顧さんは「今はちまきの作り方を習おうとする若者が少なくなりました。私たちのようなプロの中では、四十歳くらいの人はまだ『若者』と呼ばれています」、と自分の心配をしみじみと語った。すでに定年を迎えている顧さんであるが、これからももっと多くの弟子にこの伝統技術を伝えていこうと頑張っている。

ちまき作りを体験する来場者とちまきの達人の顧さん

 いっぽう、老舗薬局「余天成堂」の薬剤師は来場者に香り袋の作り方を教えた。中国の端午節には、「香囊」と呼ばれる香り袋を作って身につける習わしがある。一般にライラックやカラビャクシなどの生薬を入れ、病気よけや魔よけの意味合いがある。

香り袋の作り方を実演する薬剤師

 「春は曙。やうやう白くなりゆく山際、すこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。夏は夜。月の頃はさらなり、闇もなほ、螢飛びちがひたる。雨など降るも、をかし」。これは『枕草子』の有名な冒頭文だ。最後の「をかし」はこの随筆によく出てくる言葉で、「趣がある」や「かわいらしい」や「美しい」など多くの意味を持ち、美しいものに対する感情を表す言葉と思われている。

 書店の担当者はこの言葉を引用しながら、「ここに来る皆さんは心を静めて日々の『をかし』を発見し、そしてその発見をほかの面白い人々とシェアしたいと思っています。これも今回のイベントを通じて私たちが伝えたい理念です」とイベントの意義を語った。

山脚下的書店(山のふもとの書店)