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評論

ニュース分析:中東はトランプ大統領の外交の「突破口」になり得るだろうか

2017年5月24日 15:36
 提供:新華網日本語

新華網北京5月24日(記者/呂迎旭、呉中敏)米国のトランプ大統領は23日、継続して中東を訪問した。これまでトランプ大統領は終始、外交政策について体系的に説明することがなかったため、外界では今回の訪問から米国の新しい外交政策のわずかな手掛かりを見出したいという願いがある。トランプ大統領が意図的に中東を最初の訪問先に選んだことに、中東を重視する姿勢がはっきりと表れている。それでは、中東はトランプ大統領の将来的な外交政策の「突破口」になり得るのだろうか。

  従来の方法に異を唱える

トランプ大統領は米国大統領が初の訪問先を隣国のカナダ、又はメキシコにする慣例を改め、中東を最初の訪問国に選んだ。これは従来の方法に異を唱えるトランプ大統領のスタイルと合致し、米国の新政権そのものの特徴と地縁政治が原因でもある。

中国社会科学院米国研究所の陶文釗研究員は新華社記者に、次のように述べている。マティス国防長官を含む共和党内の多くの高官はいずれも中東で戦ったことがあり、中東問題にかなり詳しい。彼らはオバマ前大統領時代に米国で打ち出された中東に対する「縮小(retrenchment)」政策に不満に感じており、この行為が中東の同盟国の恨みを買っただけでなく、ロシアにこの機に乗じて地域の主導権を奪われもしたとみなしている。

陶研究員はまた、次のようにみなしている。米国は今回イランを再び孤立に追い込み、イランと敵対する立場をとると明確に宣言していた。これはブッシュ元米大統領の任期中に2度の戦争を発動しイランの2人の敵を打倒したことで、中東におけるイランの勢力拡大を招いている。現在米国は再びイランに制裁を行おうとしている。しかし、このやり方が地域の平和に役に立つのか、それとも不穏な動きをエスカレートさせるのかは目下判断しにくいところだ。

実益をすくいとる

トランプ大統領は選挙運動期間中と就任後に、「米国優先」のスローガンを再三声高に叫び、その貿易、税収、移民、外交などの政策がどれも米国民衆にとって有利だと公言してきた。しかし、トランプ大統領の初外遊を見ると、トランプ大統領はやはり米国の世界での地位を維持しようと努めているのが分かる。

米メディアの報道によると、サウジアラビア訪問中、米国とサウジアラビアは1100億ドルに及ぶ武器売却の巨額な注文を成立させただけでなく、また交通やエネルギーなどの分野に及ぶ数十項の貿易協議を締結したという。それ以外にも、サウジアラビアは、米国のあるインフラ整備基金に200億ドルの資金注入を承認している。

中国社会科学院西アジア北アフリカ研究所の王林聡研究員は、米国のサウジアラビアへの巨額な武器売却の目的は、米国の製造業を牽引し、米国経済を発展させることにある。これはトランプ大統領が提起した「米国優先」政策に合致しており、そしてトランプ大統領の今回の中東訪問における最も実質的な成果でもあるとみなしている。しかし王研究員は、巨額の武器売却による同盟国関係の強化は、地域に地政学的な競争を激化させ、中東を冷戦時代の「両極」が対峙する状態に戻させ、中東の平和と安全に不利となる可能性があるともみなしている。

まだ形成されていない

米メディアの報道によると、トランプ大統領が中東訪問中に行った多くの態度表明がこれまでのものとは大きく異なっていたことは、トランプ大統領の中東政策がまだ修正、下準備の段階にあるのを説明している。では、現時点でトランプ大統領の中東政策はすでに形成されたと言えるのか。少なくとも今回の中東訪問ではその肯定的な答えは出ていない。

陶研究員は、トランプ政権はまだ明確な中東戦略を形成しておらず、テロ対策、シリア、イランなどの孤立した問題を一つ一つ処理している段階にある。トランプ大統領はまだこれらの問題を前後の順に並べて1つの系統的な戦略を形成していないと指摘する。

呉剛宏氏も、トランプ大統領の中東政策はまだ形成されておらず、トランプ大統領の今後の中東への介入がどれほど深いものかは予測しがたいと考えている。

(新華社より)