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第一回 野菜で知るおいしい中国
2002年 12月 23日16:35 / 提供:

作者:上海水産大学日本語学部 余丹陽

 西安外国語学院で四年間の大学時代を過ごした、その時、日本語と日本文化を教えてくださった一人の日本人は元高校教諭の早水恒利先生。先生は昭和六十一年からの二年間と、高校教諭を退職後の平成9年二月から平成11年七月までの二回にわたり、、西安外国語学院で中国人学生に日本語と日本文化を教えていた。

 先生の二度目の訪問は単身での自炊生活。学院には中国各地から学生が集まって来ており、早水先生の宿舎を何人もの学生が訪れた。私も西安で度々先生のところで料理を作った。学生が郷土料理を作る機会も多く、先生はその時から、それまでに食べたこともない中国野菜にすっかり魅せられた。

 帰国に際して「中国での学生との交流の思い出に、日本でも育ててみよう」と、約四十種類の種を買い求め、許可を得て持ち帰った。自分の畑約三百三十平方メートルに種を蒔いた。平成11年の猛暑の夏を凌ぎ、収穫にこぎつけた。

 持ち帰った種は知人にも配り、中国野菜の栽培を楽しむ仲間が少しずつ増えた。さらに「ただ育てるより、皆で料理も作ろう」と話が盛り上がり、同年の八月に「中国野菜を作る・食べる同好会」を五人で結成した。

収穫した野菜を譲ったり、口コミで話が広まり、会員は一人、二人と増えて現在は何十人に。早水先生が月に一度ずつ発行している手作り会報で栽培法や調理の仕方を紹介したり、会員の「栽培日記」や苦労話、工夫を凝らした調理法なども掲載。会の活動も活発になり、食を通して中国の生活を知る手助けになっている。私も上海で新聞や雑誌で料理の記事を読み、時々先生のところに送った。

 今年の七月、私は日本を訪ねた。先生の住んでいる福島市へも行った。二年ぶりに先生と再会(二年前先生は上海へいらしたことがある)した。先生の畑にも行った。晩御飯は奥さんが作ってくださったヘチマの形に似た西葫芦(シフル)や蛇のようにクネクネシタ蛇豆(シャド)、シソに似ているが香りのない紅?菜(コンシャンサイ)という中国の野菜をいっぱい食べた。

 「食べることも文化の一つ。野菜作りを通して日中友好のきずなを深めたい」と先生は話している。「生活の大きな部分を占める食生活を体験することは異文化を感じる貴重な体験、これをきっかけに中国に興味をもってほしい」と先生は期待している。

 私は今上海で日本語を教えているが、授業のとき、学生に「私の目で見る日本人」ということを紹介する時、目の前にはいつも早朝の5時ごろから畑に出て、小型トラクターで耕運したり、種を蒔いたりして汗を流している先生の姿が頭の中に浮かんでくる。

 

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